マネージャのための残業削減チェックリスト
残業をなくすために必要なことを考えてみる。
前提として、接客業や警備員みたいに労働時間を直接指定される仕事についてはここでは考えない。エンジニアやホワイトカラーのように、時間の使い方に一定の裁量があり、制度上は効率よく仕事を進めれば早く帰れるはずなのに、なぜかそうはならないよね、というケースを考える。
スタート地点として、パーキンソンの法則を考える。
第1法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
これはつまり、仕事を効率化したり、無駄な仕事を削減したりしても、それによってできた時間はこれまで相対的に優先度の低かった仕事によって埋まるので、残業は減らないということだ。確かに実感ともよく合う。
逆に言えば、残業をなくすためには、残業をしないとまずはっきり決めた上で、時間内に終わらせるための効率化や低優先度タスクの切り捨てをする、という順序で考えることが必要といえる。
ところがこの、残業をしないとはっきり決める、ということが実際は難しい。
残業をしなかった場合に起きる不都合が許容できないくらい大きい、という場合もあるだろうけど、経験上は、ステークホルダーが多いので自分が残業をしなかった場合に起きる不都合がよくわからない、というところに難しさの本質があるように思う。
影響がわからないので対策を立てることもできない。残業をした場合こうなって、しなかった場合はこうなる、というはっきりした選択肢があるわけでもなく、なんとなく、ノーチョイスな感じで残業する。
理由がはっきりしないから、付き合い残業じゃないのかとか、生活残業じゃないのかとか、不合理な残業をしているという理解のされかたをすることもあるけど、そんなシンプルな話でもない。
わからないことが問題なので、何がわからないかを整理すれば解決の糸口になるだろう。従業員の立場で、わからない、あるいは判断しかねるという要素を列挙してみる。残業を削減しようとする企業の管理職、またはプロジェクトマネージャは、これらの質問に具体的な回答を用意しておく必要があり、チェックリストとして利用できる。
金銭面
- 残業しないと給料は減るのではないか
- みなし残業給の場合、残業しないのは不公平と思われないか
評価面
- 残業しないと評価は下がるのか
- 残業時間で評価しないとすればどうやって社員の貢献度を計測するのか
- 残業しないことで担当顧客からクレームが来てそれが評価に影響しないか
業務面
- 生産性向上として息抜きの時間を攻撃されないか
- 生産性向上として作業時間を管理されて裁量が減るのではないか
- タスクの優先度は明確で、後回しにできるタスクが判断可能か
- 低優先度タスクを後回しにするために必要な裁量権があるか
- 定時後コミュニティが重要な情報を抱え込むのではないか
- 労働時間を正直に申告したら何が起こるのか
契約面
- 残業をなくすことが顧客や委託先との契約に抵触しないか